おおいしだものがたり 第百二十三話 「最上川舟運の話」 その37.幕府の直差配と船方役所の配置(5)
更新日:2016年3月25日
幕府直差配の背景
直差配の具体策の建議として、15項目の提案(その要旨は下記の通り)
- 「川船方御役所」を大石田に設ける。
- 城米(幕府の年貢米)下しは、どの船にも甲乙なく、平等に割り振る。
- 私領米(大名の年貢米)と商人荷物の積み船の割合を6分対4分とする。とする。
- 大石田河岸へ船持惣代として船持仲間より二人選出し、船方御用を勤めさせる。
- 清水河岸には、役所は設けないが、役人一人を配置し、船方御用を勤めさせる。
そのほか、破船のときの弁償規定のこと、三難所の番船のこと、最上船・酒田船それぞれ帰り船の利用取扱いのこと等細かく提案されている。
(『大石田町誌資料編』二藤部家文書「御尋ニ付乍恐以書付奉申上候」)
幕府は、大筋でこの提案をうけいれ、「直差配」に踏み切る
これまで、一部の有力商人が冥加金を上納することによって川船差配役に選ばれてきた。川船差配役はその権限を利用して、横暴や不正を働いてきた。これら川船秩序の混乱を立て直すために、最上船持及び船頭・商人は「幕府の直接差配」を求めて立ち上がる。幕府は厳重な調査と吟味を行った結果、寛政4年8月、「直差配」を決定する。
直差配のための事務所「川船方役所」を大石田に建てる川船方役所の手代に大石田の神部鉄太郎等、川舟方会所の惣代に戸田安太郎が任に就く
川船の統括責任の権限は幕府の下部機関である尾花沢代官所に置かれ、川船方役所に勤務するのは代官の下役である手代が直接の統括事務を行うことになる。そして、川船差配の実務を行うのは、「川船方役所」に付随して新設された民間の「舟会所」である。舟会所の惣代は、船方役所の指導監督のもとに川船差配の実務を行うのである。
舟会所には船持惣代が置かれ、月番として二人の実務担当者を置き、その月番が惣代の監督の下に実務を執るという執行組織である。
幕府の年貢米を江戸・大坂に送るための役人(廻米の出役名主)
幕府の年貢米を江戸・大坂に安全に、責任をもって送るためには、代官所支配の村々の協力体制が不可欠である。その村々が連合体「郡中」を組織し、廻米のための決りをつくり、それに基づいて実際に執行してきた(弘化4年「郡中取締請状」富樫家文書)。
- 郡中惣代1名(年間報給、金6両)
- 外6名の惣代を置き、月交代で郡中惣代と二人で勤務に当たる(年報給は金1両)
- 川通り出役名主2名(報給は1人に付き金2両)
- 酒田湊出役名主1名(報給金15両、年間100日の勤務とみなして、それ以上の勤務の場合は1日に付き5匆づつ加給)
- 同加役(助手)1名(報給金7両、加給1日に付き3匆づつ加給)
- 江戸・大坂納(名主1名・加役1名・その他雇い人、俸給は酒田出役に準じて支給)
大石田河岸だったところ
執筆者 小山 義雄氏
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